夜の大阪観光に新たな1ページを開く、2階建てオープントップバスによる大阪周遊観光バス「~Osaka Dream Tour~ 『なにワンダー』」が11月14日から運行を開始した。大阪・関西万博を前に、夜も魅力あふれる大阪の街を楽しんでもらおうと西日本JRバスが企画。JR大阪駅を出発・帰着とする所要約4時間のコースを、12月24日(日)まで週4回運行している。御堂筋、ミナミ、天王寺、ベイエリア、大阪城を一度で巡れて、途中の自由散策では新世界で串カツや夜景を満喫できるバス旅を、運行開始前日の試乗会で楽しんできた。
若手社員のアイデアが随所に
JR大阪駅の高速バス乗り場に、2階建てオープントップバスが滑り込んできだ。西日本JRバスが今回の「なにワンダー」のために改造した車両。おなじみの2階建てバスの屋根の部分がきれいに取り除かれてある。にぎやかな外装のイラストは描き下ろしで、通天閣、大阪城、道頓堀など大阪の名所の混じり、たこ焼きやカニの立体看板など大阪らしいのアイコンが随所に。よく目を凝らすと、今季の阪神タイガース関連で話題になった大阪ゆかりの「パインアメ」も描きこまれている。今回はバスのコースからイラストまで、ほとんどを同社若手社員がアイデアを出し合った力の入れようだ。
バスに乗り込んで2階へ。確かに屋根がなく、座席は少々の雨に濡れても大丈夫なようにビニールでコーティング。座ってみるとフカフカで、視界がとても高い位置にあり、これから始まるツアーにワクワクしてきた。雨や荒天の場合には、簡易の屋根を閉めてくれるので安心だ。
光輝く御堂筋からミナミへ
17時30分、バスは大阪駅を出発。一路、御堂筋を南へ向かう。再開発が進む梅田の街。左右から高層ビルが迫り、まるで峡谷を行くようだ。御堂筋ではちょうど「光の共演」を開催中。淀屋橋から本町へ、イチョウ並木と彩られた光の洪水の中を走ると、見慣れたビジネス街も、どこかオシャレに見える。歩道を行く会社帰りの人たちも、初めて見る「なにワンダー」を珍しそうに見上げてくる。イチョウや道路看板が頭上をかすめていくのも非日常体験でおもしろい。
沿道に外国人観光客が目立つようになると心斎橋エリア。人出が一気に増え、周囲のビルやお店の電飾も手伝って、明るさが一気に増した。すぐに道頓堀。車窓左側に見える戎橋とグリコの看板をスマホに収める。ここまで乗車してから約15分。「こうやって別角度から見ると、大阪の街も案外エエやん!」とすっかり観光客の自分がいた。
千日前通りを抜けて、バスは日本橋の電気街へ。家電量販店に代わって台頭したホビー雑貨の専門店は平日夜でも大にぎわい。色とりどりのユニークな格好をした人たちもいて、さまざまな個性を飲み込む大阪のパワーを感じているうちに、通天閣がビルの間から姿を見せ始めた。
新世界では80分の自由散策
18時過ぎ、バスは止まって、一時降車。通常なら、ここから約80分の自由散策だ。早速、通天閣に足を進めると、左右に軒を連ねる串カツ屋さんの電飾がとても鮮やか。どの店からガヤガヤと楽しそうな声が漏れる。どこの串カツがおいしいやろか、と迷っていると、案内してくれた西日本JRバスの担当者が「今日は試乗なので、我慢してください!」とポツリ。「普段は『大阪串カツ食べ歩き 10%割引券』を乗客にお配りしますので、ぜひまた乗ってください」としっかりセールスされてしまった。さすが大阪商人!
バスに戻って、次は天王寺へ。あべのハルカスを座席から見上げる。しっかり空までワイドに見えるのがオープントップバスのいいところだ。高さ日本一の座は先日、東京に譲ったそうだが、夜空に光るガラス張りの地上300メートルのビルは堂々としてとても近未来的で、輝きを失っていない。
続いてバスは阪神高速を、ベイエリアまでドライブだ。車線が多い環状線では忙しく行き交う車のライトが光の波のようで美しい。2階建てなので見晴らしが良く、遮音壁の上から街を見下ろすこともできる。普段とはまた違った景色も良いものだ。
咲洲で夜景を満喫し大阪城へ
新世界を出て約40分。咲洲地区(南港)にあるコスモタワーに着いた。地上256メートルの高さを誇るベイエリア随一の超高層ビル。「なにワンダー」では最上階の展望台に入場する。今回は試乗なので、展望台に上がらなかったが、通常は東西南北を遮るものがない絶景が楽しめるそうだ。大阪に暮らすと慣れてわからないが、大阪・神戸は世界に誇る大都市圏。広がる高層ビル群、どこまでも続く街の灯りのスケール感は、外国人観光客の目を奪うこと間違いないだろう。今後は建設が進む夢洲の万博会場も明かりも見えて、ますます注目スポットになりそうだ。
再び阪神高速を東に走って大阪城へ。来年で最初の築城から440年を迎える大阪の誇りが、闇夜の中に浮かび上がり、堂々とした姿で迎えてくれた。同乗のバスガイドさんも、大阪の歴史や車窓の見どころを紹介してくれてわかりやすい。時折り、大阪らしいギャグを交えてくるのはご愛嬌。「そう言えば、外国人にどうやって案内するん?」と聞いたところ、こちらも準備バッチリ。ヤマハ株式会社が開発した「おもてなしガイド powered by SoundUD」を導入し、専用アプリを使って、乗客自身のスマホで文字や音声で案内するそうだ。
縦横無尽に魅力を新発見
バス旅もそろそろフィナーレ。阪神高速で梅田へ向かう。高速から御堂筋のイルミネーションを再び見下ろし、中之島の高層ビルを目に焼き付けて大阪駅へ。あっという間の試乗会が2時間半で幕を閉じた。通常のコースでは、新世界での自由時間80分、コスモタワーでの展望台見学30分を加えて、所要約4時間、21時30分頃の帰着になる。大阪の都心部の移動は地下鉄が多く、地上をこうして縦横無尽に行き来して、ゆっくり街を眺めたのは初めてかも。オフィス街から歓楽街、歴史スポットから未来へ続く開発エリアまで、大阪の魅力にどっぷり浸かれる周遊観光バスが誕生した。
西日本JRバス営業統括部バス旅創造課の野々瀬亮課長は「大阪の魅力をぎゅっと詰め込めこもうと、若手中心の社員が力を合わせて考えました。万博に向けて大阪の夜の観光を盛り上げていきたい。外国人の皆様にも多く乗っていたただければうれしいです」と話していた。
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~Osaka Dream Tour~ なにワンダー(NANI‐wonder)
・大阪駅JR高速バスターミナル 17時30分発(21時30分着)
・12月24日(日)まで。日、水、金、土曜日運行。
・大人5,000円、こども2,500円(4~12歳)
※コスモタワー展望台の入場料は含むが、新世界での自由散策にかかる費用(夕食代など)は含まない。
・アソビュー、VELTRA(ベルトラ)のWEBサイトで販売。
・今回の周遊観光バスは次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」を使用している。
・防寒対策を十分にして乗車がおすすめ。
詳しくは西日本JRバスのWEBサイトへ。
https://nishinihonjrbus.co.jp/lp/osaka-sightseeing/